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アダルト業界が‟呉越同舟” 知的財産保護
投稿者: taguchi

6月20日、違法ダウンロードを罰則化する著作権法改正案が可決・成立したわけだが、奇しくも同日、椿山荘(東京都・文京区)で知的財産の保護活動推進を目的とした「第一回 業界団体懇親会」が開催された。

 この”業界”とはアダルト業界である。アダルトコンテンツメーカー(AV、アダルトゲームなど)、レンタル店、販売店などで構成される業界団体(コンテンツ・ソフト協同組合、ビジュアルソフト・コンテンツ産業協同組合、日本映像ソフト制作・販売倫理機構、一般社団法人東日本コンテンツ・ソフト、全日本ビデオ倫理審査会)が知的財産の保護を目的に昨年5月、特定非営利活動法人「知的財産振興協会」(IPPA)を設立した。その第一回目の懇親会が開かれたという次第なのだが、そもそもメーカーの対立によって業界団体が乱立してきたという経緯がある。IPPAはまさに、“呉越同舟”。どのような会になるのか、期待と不安を抱きつつ、参加してきた。

 各企業・団体の挨拶では、販売店からメーカーへの苦言、あるいはレンタル店と販売店の微妙な関係、メーカー同士の皮肉が呈されるなど、ドキッとさせられる発言もあったのだが、いずれも冗談交じりで会場からは笑い声も。和やかなムードで会は進む。そんな中、本題の知的財産に関して、ある関係者はこんなことを語ってくれた。

「海賊版の売買、ネットでの動画の違法なアップロード、ダウンロードは本当に大きな痛手。だけど、いつまでたってもイタチごっこだし、対策しようにも費用対効果が薄い。立場上、あきらめているとは言えないけれど、正直、難しいだろうなというのが本音です」(メーカー)

 当たり前のことだが、アダルト作品にも著作権はある。そして、ファイル共有ソフトの利用者や海賊版の販売者などを監視し、違法者を告訴してきた実績もある。しかし、今回の違法コンテンツのダウンロード罰則化に際しても、その是非はさておき、聞こえてくるのは音楽業界の威勢のいい声ばかり。音楽業界と同様、大きな被害を被っているアダルト業界の反応はあまり見えてこない。

「どうせアダルトは大丈夫でしょ」
「音楽、映画は危ないけど、AVはほどほどなら捕まることはない」

 ネット上には、このようなタカをくくったユーザーの発言が目につく。これまで、著作権法違反行為に対する姿勢をうまくアピールできなかったという証左だろう。また、著作権違反行為への対応が鈍く感じられるのには、このような理由もあるようだ.

「違法ダウンロードの罰則化に向け、激しいロビー活動を繰り広げていたのは音楽業界。アダルト業界の多くの人は冷ややかな目で見ていたと思いますよ。そもそも、アダルト業界は長年ずっと、規制される側でしたからね。そんな目に遭ったことのない音楽業界とは、根本的に考え方が違う。『どうせアダルトでは動いてくれない』といった捜査機関に対する不信感も大きいんです」(制作会社)

 ただ一方で、この懇親会を契機に、業界は変わっていくと期待を寄せる声も少なくはない。

「確かに足並みを揃えるのは難しいかもしれません。それでもとにかく、相まみえることのなかった各団体・メーカーが、一堂に会したことにこそ意義があるんだと思います。何ができるかはわからない。だけど、何かやらなきゃいけないという思いは、どの団体だろうと、どのメーカーだろうと同じです」(販売業者)

「せっかく汗水垂らして作った作品が、いとも簡単にコピー販売され、違法にアップロードされるのは悔しい。業界としては今後、アダルトだけでなく一般の動画・コンテンツに関わる企業・団体とも連携を取っていく予定です。違法行為に手を染めている人たちには、こうした会が開かれているということ、業界としてより一層厳しく対処していく決意を強めているということを、ぜひ知ってもらいたいですね」(メーカー)

 違法コピーにより、年間数百億円の損失を被っていると目されているアダルト業界。知的財産の保護という水平線に乗り出す立派な“舟”は準備ができた。確実に最初のひと漕ぎは放たれた。あとは呉越がリズムよく舵を切り、櫂(かい)を操作できるかどうかがポイントだろう。

 この航路にはきっと困難も待ち受けているはず。しかし「とにかく始めよう」「まとまろう」という今回の決意表明は、航路を明るく照らし出している。


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